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summary
【背景】くも膜下出血等の脳血管疾患後には,水頭症を発症しやすい.また,脳室-腹腔シャントを造設したため胃瘻造設ができず,経鼻胃管栄養法となる場合が多くみられる.脳出血治療後,嚥下障害を併発し経鼻胃管栄養法での栄養管理であったが,経鼻胃管離脱,経口摂取へ完全移行できた症例を経験したので報告する.
【症例】50代男性.自宅の湯船内で意識消失,救急搬送となる.くも膜下出血を認め,開頭脳動脈瘤頸部クリッピング術で外減圧術施行するが,意識障害が持続し気管切開術,脳室-腹腔シャント術施行.栄養ルートは経鼻胃管.介護力不足のため,住宅型有料老人施設へ転居となった.
【経過】意識障害,四肢麻痺,高次脳機能障害を認め,開眼するが意思疎通は困難で,声かけに反応が少なかった.住宅型有料老人施設に入居後,食品から処方栄養剤の投与に変更.しばらくは経鼻胃管ルートを使用していたが,経口摂取訓練を再開してほしいと,家族から強い要望があった.てんかん薬調整,嚥下内視鏡検査(以下,VE),食形態調整のほか,多職種にて間接訓練を毎日実施した.経鼻胃管栄養法を併用し,食形態調整に加えて補助栄養ゼリーも追加し,直接訓練も継続した.経鼻胃管ルートは,訪問診療にて定期的に交換していたが,介入195日目に自己抜去され,再挿入までの期間に経鼻胃管投与の栄養剤をゼリー化し,経口摂取を試した.経鼻胃管不使用により経口摂取はスムーズとなり,嚥下反射は改善し,補助栄養ゼリー含め食事は全量摂取可能となった.発語も増え,表情が明るくなり,食事回数・離床時間が増えた.結果,経鼻胃管は再挿入せず離脱できた.
【考察】急性期を過ぎた脳梗塞患者でも,直接・間接訓練にて嚥下機能が改善し,経口摂取に移行できた.咽頭部に経鼻胃管ルートが通ることで,嚥下しにくく嚥下圧のかかりにくい状態となり,咽頭残留が増える.本人の病態・変化する身体機能に応じた細やかな栄養支援・提案が必須であった.多職種での支援内容を明確化することで,包括的な支援が可能となった.
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