FORUM 人間社会の未来――専門家が予見する人類の行方・Vol.14
人間と地球の持続可能な共存を目指すプラネタリーヘルス
渡辺 知保
1
Chiho WATANABE
1
1長崎大学大学院プラネタリーヘルス学環
pp.1043-1045
発行日 2026年3月14日
Published Date 2026/3/14
DOI https://doi.org/10.32118/ayu296111043
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
プラネタリーヘルス(PLH)とは何か
プラネタリーヘルス(planetary health:PLH)は,2015年に『Lancet』誌に掲載された論文(ロックフェラー財団・ランセットの委員会報告書1))によって世の中に売り出された言葉であり,地球の状態と人間の文明とは相互依存しており,前者を賢く見守る(steward)ことで後者の健全性を実現することであると定義された.その後,さまざまな定義が提唱されたが,上記の概念的な定義をふまえて,これを実現するための研究および研究を社会で実践する活動として定義したものが多い.この定義からも明らかなように,PLHは新しいひとつの学問分野ではなく,人間を地球生態系のなかに位置づける生態学的視点を特徴とする「研究および研究に基づく実践のフレームワーク」であり,さまざまな分野の研究・実践に広く適用可能である.ヘルスという名称のために,グローバルヘルスのような医学の一分野だと了解している人も多いが,実際は極めて多様な学際研究や超学際的活動(アカデミアとノンアカデミアの協働)を促すフレームワークとして理解しておくのがよいだろう.生態学的視点という意味で,PLHは人類生態学(human ecology)との共通点も多いが,もっぱらさまざまな地域集団とローカルな環境との関係を分析してきた人類生態学に対し,PLHはローカルを重視しつつも地球全体へのインパクトも視野に入れている点,および,(特に日本では)あるがままの相互作用を捉える観察型の人類生態学2)に対し,社会変革を目指す介入型のフレームワークであるPLHという点が異なっている.

Copyright © 2026 Ishiyaku Publishers,Inc. All Rights Reserved.

