特集 自然保護—特に人間生態学的立場から
地球生態系のなかの人間
只木 良也
1
Yoshiya TADAKI
1
1信州大学(理学部)生態学
pp.532-536
発行日 1980年8月15日
Published Date 1980/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206127
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■地球の新参者,ヒト
地球が誕生したのは約40億年前だといわれている.この上に生まれ進化してきた生物は,地球上の環境を徐々に変化させてきた.そして現在,ヒトという生物の活動は,かつてなかったほどの急激な環境変化を地球上にもたらしている.
地球の年齢40億年を1年間に圧縮したスケールで考えてみよう.1月1日零時に地球が誕生したとすると,その上に生物が発生するのが4月はじめごろである.陸上植物が発達するのはようやく11月下旬,陸棲脊椎動物の出現が12月5日ごろのことになる.下等哺乳類が高等哺乳類へと発達するのは12月26日,類人猿から人類へと進化するのは12月も28日になってからである.そして人類がようやく発達しだす約100万年前は,なんと12月31日大晦日の21時49分ごろに当たるのである.キリストは大晦日23時59分45秒に生まれ,産業革命はこの年の終わる2秒ばかり前のことであった.最後の1秒間に,人類という生物集団は全く異常なほどの大繁殖を遂げ,その繁栄のために自然を食い荒す.そして,気の遠くなるほどの永い間かかって築き上げられてきた地球上の環境を急変させるのである.こんな急激な環境変化をもたらした生物が,かつて存在しただろうか.もし,それに近い生物がいたとしても,その生物は自らのもたらす資源条件や環境の改変のために,自滅の途をたどっていったのである.
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