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特集 全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック
マイクロ・ナノプラスチックの表面性状と細胞障害性
Impact of surface modifications on MNPs cytotoxicity
辻野 博文
1,2
Hirofumi TSUJINO
1,2
1大阪大学ミュージアム・リンクス
2同大学院薬学研究科
キーワード:
マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)
,
表面性状
,
ポリエチレン(PE)
,
細胞障害性
Keyword:
マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)
,
表面性状
,
ポリエチレン(PE)
,
細胞障害性
pp.128-131
発行日 2026年1月10日
Published Date 2026/1/10
DOI https://doi.org/10.32118/ayu296020128
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マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は環境中に広く存在し,水,土壌,空気,さらにはヒト組織からも検出されており,その健康影響が懸念されている.本稿では,MNPsの化学的表面酸化と細胞障害性について,筆者らの検討結果を報告する.環境由来のポリエチレン(PE)サンプルの表面性状はカルボニル基やヒドロキシル基など酸素含有官能基の導入が確認されており,研究室内での真空紫外光(VUV)照射による酸化処理により,環境中のサンプルと同様に表面に酸素原子を導入したサンプル(d-PE)を作製した.未処理のPE試料では細胞障害性をほとんど示さなかったにもかかわらず,d-PE試料は濃度依存的かつ酸化度依存的に細胞障害性を示し,表面性状の変化が細胞障害性に強く関与する可能性が示された.次にRNA-seq解析により,d-PE曝露はグルタチオン代謝,ペルオキシソーム,脂肪酸酸化経路,さらにフェロトーシス関連経路を活性化し,酸化ストレス依存的な細胞死を誘導することが示唆された.さらに,酸化ポリ塩化ビニル(PVC)でも同様の細胞障害性の増強が観察され,酸化による影響はポリマー種を問わない共通の現象であることが示された.本研究の結果は,MNPsの化学的な表面性状の変質が細胞毒性発現の重要な要因であることを示すものであり,環境中で劣化したプラスチックが酸化ストレスや脂質過酸化を介して細胞機能に影響を及ぼす可能性を示している.これらは,血管機能障害などを含むさまざまなヒト疾患へのMNPsの影響を理解するうえで重要な知見である.

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