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第1土曜特集 分子基盤に基づくメカノバイオロジーの臨床応用最前線
メカニカルストレスに起因する疾患――治療標的の同定に向けて
がん間質の線維化およびがん物理的特性の制御機構と臨床応用
Regulatory mechanism of fibrosis and mechanical property of cancer and its clinical application
張 涵威
1
,
杉江 亨啓
1
,
榎本 篤
1
Hanwei ZHANG
1
,
Takahiro SUGIE
1
,
Atsushi ENOMOTO
1
1名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍病理学
キーワード:
がん関連線維芽細胞(CAF)
,
がん間質
,
線維化
,
硬さ
,
薬物送達
Keyword:
がん関連線維芽細胞(CAF)
,
がん間質
,
線維化
,
硬さ
,
薬物送達
pp.926-931
発行日 2025年9月6日
Published Date 2025/9/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294100926
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がんは,がん細胞とがん細胞以外の領域(間質)から構成される.がん関連線維芽細胞(CAF)は,がん間質を構成する細胞の一種である.線維芽細胞は正常組織にも存在し,さまざまな生理的機能を有する細胞であるが,がんの浸潤によって組織が破壊されると,速やかに活性化し増殖する.その目的は,細胞外基質の産生と沈着による損傷部位の修復である.がん浸潤の持続によってこの修復反応が遷延すると,細胞外基質の過度の沈着と組織硬化,すなわち線維化をもたらすこととなる.ヒトのがんの特徴のひとつは,種々の程度の線維化や炎症が時空間的に混在することであるが,近年の線維芽細胞のマーカーの同定や1細胞解析により,その多様性の本態が明らかになりつつある.本稿では,がん間質を “柔らかくて良い間質” と “硬くて悪い間質” に分類して理解する試み,および,これらの間質の物理的特性が治療感受性に及ぼす影響とその臨床応用について,私見も交えて概説したい.

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