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特集 健康と医療を革新する数理工学――数学を医学に活かす!
数理科学に基づく臨床試験デザインの最適化
Clinical trial design optimization based on mathematical science
山本 将太朗
1
,
岩見 真吾
1
Shotaro YAMAMOTO
1
,
Shingo IWAMI
1
1名古屋大学理学研究科理学専攻生命理学領域異分野融合生物学研究室
キーワード:
臨床試験
,
シミュレーション
,
数理モデル
,
ドラッグリポジショニング(DR)
,
prf(potency reduction factor)
Keyword:
臨床試験
,
シミュレーション
,
数理モデル
,
ドラッグリポジショニング(DR)
,
prf(potency reduction factor)
pp.145-151
発行日 2025年7月12日
Published Date 2025/7/12
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294020145
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは,迅速な抗ウイルス薬の開発が不可欠であることを浮き彫りにした.ドラッグリポジショニング(DR)は,新興感染症に対する治療薬を早期に開発するための有効な戦略のひとつとされる.しかし,その有効性が示されない事例も少なくなく,要因のひとつとして臨床試験のデザインが十分でないことが指摘されている.したがって,適切な試験デザインの確立が求められている.本稿では,具体例として抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬であるネルフィナビル(NFV)を,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する治療薬として転用した試みを取り上げる.NFVの臨床試験では,主要評価項目に統計的有意性が認められなかった.そこで,培養細胞実験と生体内での薬剤効果の乖離を定量化し,その影響を解析した.さらに得られた解析結果をもとに,薬剤効果の乖離を考慮した臨床試験のシミュレーションを実施した.その結果,必要な症例数が従来の設計よりも大幅に増加することが明らかとなった.これにより,薬剤効果の乖離が臨床試験の評価項目に与える影響や,試験前に薬剤効果の低下を考慮する重要性が示された.今後,試験デザインの最適化には,データ取得と解析手法の発展に加え,医療・研究機関と数理科学の緊密な連携を支える社会基盤の構築が不可欠である.

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