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Case せん妄患者に,リスクを回避するための身体的拘束を実施することは許されるか
患者Aは80代で,腰痛で歩行不能となったためにB病院に入院し,1カ月あまりが経過した.9カ月前に狭心症にてC病院に2カ月間入院,3カ月前に肋間神経痛にてD病院に1カ月半入院し,その際転倒して骨折をきたした経緯がある.そのリハビリテーションと内科的治療のためにB病院に転院し1カ月後に退院したものの,B病院に再入院となった.
夜間のスタッフステーションで,看護師らは,患者Aの対応に苦慮していた.午後9時の消灯後も,頻回にナースコールを押し,「おむつを替えてもらいたい」と言う.しかし,おむつが汚れていないときもあり,汚れていないと説明しても納得しないため,おむつを替えた.午後10時に,車いすを足で漕いでスタッフステーションにやって来て,「おむつを見てほしい」と言う.その後も4回ほどスタッフステーションに来ては,「おむつが濡れているので眠れない」という訴えを繰り返し,その都度,看護師は病室に送り,就寝するよう説得に努めた.午前1時に,患者Aは,また,スタッフステーションに来て,大声を出しておむつを交換してほしいと言ったが,やはりおむつは濡れていなかった.何度も病室からスタッフステーションに来るので,転倒の危険があると考えた看護師らは,スタッフステーションに一番近い個室に患者をベッドごと移動させた.そこで,声をかけたり,お茶を飲ませたりして落ち着かせようとしたが,興奮状態は収まる様子がない.夜間で,3名の看護師のうちのひとりは休憩に入っている.2名の看護師で,27名の入院患者に対応しなければならないので,身体的拘束もやむを得ないのではないか,と考えた.
このようなケースは,倫理的にどのように考えたらよいだろうか.

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