連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・2
高齢者虐待(医療ネグレクト)
楠瀬 まゆみ
1
Mayumi KUSUNOSE
1
1理化学研究所生命医科学研究センター生命医科学倫理とコ・デザイン研究チーム
キーワード:
高齢者虐待
,
医療ネグレクト
,
意思決定能力
,
四原則
Keyword:
高齢者虐待
,
医療ネグレクト
,
意思決定能力
,
四原則
pp.671-674
発行日 2025年2月22日
Published Date 2025/2/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292080671
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Case 乳がんの可能性が高く検査が必要だが,配偶者が拒否している場合
患者Aは70代の女性で,70代の夫Bと2人暮らし.遠方に娘が1人いる.Aは左胸に痛みを訴え,夫とともに来院した.診察前にBは看護師に,「Aは最近もの忘れが多いので,診察の結果はまずBに知らせてほしい」と告げた.診察が終了し,医師はBに,Aは乳がんの可能性が高いので,早めに次の予約をとるよう告げた.Bは,Aががんの場合この先どうなるのか尋ねた.医師は,今の段階では確実なことは言えないとしたうえで,一般的な治療法について簡単に説明し,検査のうえAに適した治療法を選択することになると伝えた.するとBは「うちにはそんな余裕はない,何もしなくていい.もう歳だし,自然に任せればいい」と強い口調で言った.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.