Japanese
English
特集 生物学的相分離と計測技術
はじめに
Introduction
白木 賢太郎
1
Kentaro SHIRAKI
1
1筑波大学数理物質系
pp.267-267
発行日 2025年1月25日
Published Date 2025/1/25
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292040267
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- Abstract 文献概要
液–液相分離という溶液化学の古めかしい専門用語が生命科学の一流誌をにぎわすようになっている.液–液相分離とは要するに水と油が分かれる現象で,ドレッシングがわかりやすい.ドレッシングを振ると水の中に油の粒ができ,置いておくと時間とともに融合していく様子を思い浮かべることができるであろう.それと同じような現象が細胞内にも生じているという.細胞内でタンパク質やRNAが液–液相分離して形成された粒のことを液滴(ドロプレット)という.細胞内にあるドロプレットは,遺伝子の転写や翻訳,タンパク質のフォールディング,シグナル伝達,品質管理,代謝の反応の区画化や,物質の貯蔵や隔離など,生体物質の時空間的な制御をする場として機能していることが明らかにされてきている.このような細胞内に起こる相分離は,単純な分子による相分離や相転移とは区別し,生物学的相分離とよんだほうがいいかもしれない.
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