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第1土曜特集 腸内フローラの研究進展と臨床応用
基礎研究の進展
腸肝軸を介した腸内細菌関連因子が関わる肝臓のホメオスタシスと病態
Gut-liver axis-mediated liver homeostasis and diseases
大谷 直子
1
Naoko OHTANI
1
1大阪公立大学大学院医学研究科病態生理学
キーワード:
腸肝軸
,
腸内細菌代謝物
,
組織微小環境
Keyword:
腸肝軸
,
腸内細菌代謝物
,
組織微小環境
pp.324-332
発行日 2024年11月2日
Published Date 2024/11/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu291050324
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ヒトの腸内には500~1,000種類ほど,数にして100兆以上の細菌,真菌,ウイルス,古細菌を含む微生物が存在するといわれている.腸内細菌と哺乳動物宿主は通常,互いによい共生関係を共有しており,腸内細菌は宿主が消化できない栄養素を消化し,それを宿主が利用する,いわゆる “エコシステム” を形成している.腸内細菌は腸へは直接影響を及ぼすが,肝臓に対しても門脈などを介して菌体成分や代謝物を肝臓に送り込み,影響を及ぼす.たとえば,腸内細菌によって食物繊維の発酵により生成される短鎖脂肪酸は,エピジェネティックなメカニズムを介して,制御性T細胞(Treg)の誘導を通じて炎症を抑制する.さらに,腸内細菌によって一次胆汁酸の7α-脱水酸化反応によって生成される二次胆汁酸は,転写因子の活性化リガンドとして働くほか,DNA損傷を誘発し,組織微小環境のリモデリングにも関与すると考えられている.肝機能に影響を与えるとされる他の腸内細菌由来因子物質には,リポ多糖(LPS;グラム陰性細菌の外膜成分)やリポタイコ酸(LTA;グラム陽性細菌の細胞壁成分)がある.これらは,それぞれ自然免疫受容体であるToll様受容体(TLR)4およびTLR2のリガンドであり,自然免疫シグナルが惹起されるものと考えられる.本稿では,腸内細菌関連因子の肝臓組織微小環境への影響に焦点を当て,最近のトピックスも含め,腸内細菌関連因子による肝病態(肝がんを含む)への作用について紹介する.
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