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第5土曜特集 内分泌疾患の温故知新――日本内分泌学会創設100周年を目前にして
視床下部・下垂体
腫瘍随伴自己免疫性下垂体炎
-――疾患概念の発展と今後の展望
Paraneoplastic autoimmune hypophysitis:conceptual development and future perspectives
坂東 弘教
1
,
井口 元三
2,3
Hironori BANDO
1
,
Genzo IGUCHI
2,3
1神戸大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科
2同大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学
3甲南女子大学医療栄養学部医療栄養学科
キーワード:
腫瘍随伴症候群
,
抗PIT-1下垂体炎
,
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)単独欠損症
,
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連下垂体炎
Keyword:
腫瘍随伴症候群
,
抗PIT-1下垂体炎
,
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)単独欠損症
,
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連下垂体炎
pp.640-644
発行日 2024年8月31日
Published Date 2024/8/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290090640
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リンパ球性下垂体炎や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)単独欠損症は,自己免疫が主たる病態である.後天的に成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL),甲状腺刺激ホルモン(TSH)を特異的に欠損した症例の解析から,これらホルモンの発現に必須の転写因子PIT-1を認識する自己抗体やPIT-1発現細胞に対する細胞傷害性リンパ球が同定された.“抗PIT-1下垂体炎” と命名された本疾患の重要な転換点は,PIT-1に対する免疫寛容の破綻がPIT-1タンパクを異所性に発現する胸腺腫・悪性腫瘍の合併に起因することが明らかになったことである.研究はさらに発展し,ACTH単独欠損症の一部にプロオピオメラノコルチン(POMC)/ACTHを異所性に発現する腫瘍が合併すること,また,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連下垂体炎の一部の症例を説明しうることが明らかとなった.これらの解析から,腫瘍内異所性抗原に対する自己免疫反応が,腫瘍組織のみならず下垂体をも障害するという新たな疾患概念 “腫瘍随伴自己免疫性下垂体炎” を提唱しえた.自己免疫が発症機序として想定される下垂体機能低下症症例では,潜在的な腫瘍合併に留意が必要である.
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