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リンパ球性漏斗下垂体炎は,特発性尿崩症の原因疾患と考えられる病態である。間脳下垂体機能障害調査研究班の平成13年度の報告書によれば,主症候としては頻尿,多飲,口渇などの尿崩症に特有な症候を呈する。検査所見は中枢性尿崩症に合致する。画像検査では下垂体茎の限局的肥厚,または下垂体神経葉の腫大を認め,造影剤により均一な造影増強効果を認める。また,下垂体後葉や下垂体茎の生検で,リンパ球を中心とした細胞浸潤,慢性炎症像を認める。これがいずれも認められれば,確実例と診断される。生検が施行されていないが他の所見を満たす例は疑い例として,治療を行いながら鑑別診断に注意し,経過を観察する。参考所見としては,下垂体前葉機能は保たれることが多いが,GHやgonadotropinの分泌不全やPRLの増加を認める例があることや,画像検査の異常が自然経過で消退することが多いこと,などである。リンパ球性漏斗下垂体炎は基本的にはself-limitedと考えられ,術前診断が困難な例以外は保存的治療が優先される。この病態は非常に多彩であり,未だ不明な点が多く残されている。本稿では,自験例および過去の文献例をもとに,この疾患の病態を概説する。
はじめに
リンパ球性下垂体炎は,Beressiらのreviewによれば,1962年Goudieらによって初めて報告されて以来9),1999年までに145例の報告があり,そのうち組織診断のなされたのは121例で,102例は1990年以降のものであった5)。リンパ球性下垂体炎は,下垂体前葉炎と漏斗下垂体後葉炎に大別される。従来,これらは独立して起こり,前葉炎では下垂体前葉に限局してみられ,尿崩症は合併せず,また,後葉炎では視床下部漏斗部,下垂体茎,下垂体後葉に限局してみられ下垂体前葉機能は保たれるとされてきた。しかし,尿崩症を伴った前葉炎や前葉機能障害を伴った漏斗部下垂体後葉炎の報告が近年増加しており,これら下垂体前葉あるいは後葉の一方で生じたリンパ球性の炎症が,他方にも波及し得ることが注目されている。このようなことから,表1および2に示すように,間脳下垂体機能障害調査研究班では,平成13年度の報告書で,この疾患の診断の手引きの改訂を行った22)。これらの病態は非常に多彩であり,未だ不明な点が多く残されている。本稿では,リンパ球性漏斗下垂体(後葉)炎に焦点をしぼり,自験例および過去の文献例をもとに,この疾患の病態を概説する。
Lymphocytic infundibuloneurohypophysitis was firstly reported by Saito et al and Imura et al as a cause of idiopathic central diabetes insipidus. MR imaging with a contrast medium demonstrates thickening of the pituitary stalk, enlargement of the neurohypophysis, or both with homogeneous enhancement. Histological examination reveals the posterior pituitary that is heavily infiltrated by lymphocytes with occasional plasma cells and other inflammatory cells. In early reports of the disorder, the lesion seemed to be limited to the neurohypophysis, but the present review showed cases with a combination of hypopituitarism and diabetes insipidus. Some of them showed partial hypopituitarism. In typical cases of lymphocytic infundibuloneurohypophysitis, conservative care with steroids and hormone replacement are recommended. Surgical intervention should be avoided because the natural course of the disorder may be self-limited. Pathophysiology of the disorder is still unknown. The unique clinical manifestations of the disorder are discussed.
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