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第1土曜特集 乳癌のすべて2024
将来への提言
乳癌診療を通じて全人的医療を学ぶ
Learning holistic medicine through breast cancer treatment
中村 清吾
1
Seigo NAKAMURA
1
1昭和大学臨床ゲノム研究所所長,同医学部乳腺外科
pp.475-475
発行日 2024年8月3日
Published Date 2024/8/3
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290050475
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1980年代初めは,“メスで癌を治す” という概念が主流であった.しかし,特に乳癌の世界では病巣を包むようにきれいに取り除いたにもかかわらず,一部の癌は再発していた.一方,大規模ランダム化比較試験の結果から,各種の周術期薬物療法が乳癌手術後の予後を改善することが示された.われわれが画像診断で非触知の早期発見とみなす小腫瘤でも,顕微鏡下で観察すると,億の単位の細胞集塊であることは,大きく癌治療の概念を変えた.また,サブタイプごとに化学療法,ホルモン療法,抗HER2(human epidermal growth factor receptor 2)薬を使い分ける標準治療は,診療ガイドラインをベースとして乳癌の治療成績の向上におおいに寄与した.2023年に『BMJ』誌に掲載されたオックスフォード大学からの報告では,術後5年の死亡率は,1993~1999年に初期治療を受けた人では14.4%であったが,2010~2015年に受けた人では4.9%となった1).さらに今日,1個の癌細胞の中で,癌増殖のメカニズムがどのように働いているかが遺伝子レベルで把握できるようになり,そのメカニズムに応じた薬物療法がさまざま開発されている.近い将来,術後5年以内の死亡率はほぼ0%になることが期待され,また,乳癌死ゼロを目指すことも絵空事ではなくなりつつある.
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