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第5土曜特集 遺伝統計学の新潮流――新規創薬・個別化医療への挑戦
遺伝統計学の理論と実践
縄文人由来変異が解き明かす縄文人と渡来人の混血過程
Jomon-derived variants reveal the admixture process between Jomon people and immigrants from continental East Asia
大橋 順
1
,
渡部 裕介
1
Jun OHASHI
1
,
Yusuke WATANABE
1
1東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
キーワード:
縄文人由来変異
,
ancestry marker index(AMI)
,
Jomon allele score(JAS)
,
集団平均ポリジェニックスコア(PA_PS)
Keyword:
縄文人由来変異
,
ancestry marker index(AMI)
,
Jomon allele score(JAS)
,
集団平均ポリジェニックスコア(PA_PS)
pp.1076-1082
発行日 2024年3月30日
Published Date 2024/3/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu288131076
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現代日本人は,縄文人と弥生時代以降に東アジア大陸からきた渡来人が混血した集団である.筆者らは,縄文人と渡来人の混血過程と,縄文人や渡来人に特徴的な表現型を調べるために,縄文人に由来する可能性が高い変異(縄文人由来変異)を現代日本人のゲノムデータから抽出した.個体が保有する縄文人由来変異数を都府県間で比較したところ,東北地方の人が持つ縄文人由来変異の数は多く,近畿地方と四国地方の人では少なかった.この事実は,縄文人と渡来人の混血は近畿地方や四国地方で先行して起こり,その後,混血した人々が徐々に拡散して各地の縄文人と混血した可能性が高いことを示唆している.さらに縄文人集団と渡来人集団のそれぞれについて,ゲノムワイドにSNPアリル頻度を推定し,60種類の量的形質(主に血液検査項目)について縄文人集団と渡来人集団の集団平均ポリジェニックスコア(PA_PS)を求めた.その結果,縄文人は中性脂肪や血糖値が高くなりやすい遺伝的素因を,渡来人はCRPと好酸球数が高くなりやすい遺伝的素因を備えていたことがわかった.相対的な比較ではあるが,日本人の祖先集団は,それぞれの生業に適した遺伝因子を持っていたのかもしれない.
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