糖尿病とがん -――疫学と国際動向

Diabetes mellitus and cancer ――Epidemiology and global trend

　近年，糖尿病とがん罹患リスクの関連が明らかになってきている．日本糖尿病学会と日本癌学会は合同委員会を設立し，2013年に「糖尿病と癌に関する委員会報告」で，わが国の疫学データから糖尿病が全がん，大腸がん，肝臓がん，膵臓がんのリスク上昇と関連していることを発表した^1）．その後も検討を継続し，2016年には，当時，血糖管理とがん罹患リスクについては盲検化の有無や追跡期間の長さなどの点で質の高いエビデンスが存在しないことを明らかにした^2）．各種血糖降下薬についても，がんリスク上昇の懸念やがん抑制への期待が提示された研究が存在するが，交絡因子や再現性の点で十分でなく，現在でも綿密に計画されたランダム化比較試験や観察研究が実施されることが期待されている．