Japanese
English
TOPICS 免疫学
免疫抑制性PD-1アゴニスト抗体による炎症性疾患の制御
Immunosuppressive PD-1 agonist antibodies downregulate inflammatory diseases
太田 明夫
1
Akio OHTA
1
1神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター 免疫機構研究部
pp.667-668
発行日 2023年8月19日
Published Date 2023/8/19
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28607667
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
PD-1刺激による炎症性疾患の治療
PD-1は活性化したリンパ球に発現し,その免疫抑制機能によって免疫反応の強度を調整する役割を有する.PD-1の免疫抑制活性を阻害する抗体が,がんの治療へと実用化されていることからもうかがえるように,PD-1を介した免疫調節はヒトの免疫系において影響力の高いメカニズムであり,疾患治療に向けた有力な標的分子といえる.炎症性疾患には有効な治療手段が限られているものが多く存在しており,PD-1の有する免疫抑制活性の積極利用が,過剰な免疫反応が原因となっている疾患の新たな治療オプションとなるかもしれない.実際に,PD-1のリガンド分子であるPD-L1を改変した新規物質1,2)やPD-L1の利用効率を高める処置3)による免疫抑制の報告が最近になって続いており,PD-1を標的とした医薬品開発が改めて脚光を浴びる形になっている.特定の標的に対する医薬品としては,抗体分子の抗原特異性および高親和性は魅力的であるが,これまで抗PD-1抗体といえば,PD-L1のようなリガンド分子の結合を妨げて免疫機能の活性化をもたらすブロッキング抗体が主であった.この種の抗体の発見から20年が経過するのに対して,PD-1の免疫抑制活性を誘導できるアゴニスト抗体がどういうものであるか,必要条件などは不明のままであった.
Copyright © 2023 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.