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第1土曜特集 五感を科学する――感覚器研究の最前線
視覚
網膜発生の分子メカニズムとヒト網膜疾患
Molecular mechanisms underlying retinal development and human retinal diseases
古川 貴久
1
Takahisa FURUKAWA
1
1大阪大学蛋白質研究所分子発生学研究室
キーワード:
網膜
,
細胞運命決定
,
マスター転写因子
,
シングルセルRNA-seq解析
,
エピジェネティックス
Keyword:
網膜
,
細胞運命決定
,
マスター転写因子
,
シングルセルRNA-seq解析
,
エピジェネティックス
pp.604-609
発行日 2022年8月6日
Published Date 2022/8/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28206604
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脊椎動物の網膜は,胎生期に将来間脳となる脳部位が膨出して形成される中枢神経系の組織であり,視覚の入口として光受容とそれに続く視覚情報処理を行う.網膜の巧緻な構造がどのような分子機構に基づいて形成されるのかという問題は,古くは19世紀の神経組織学者Ramón y Cajalの時代から,多くの科学者を魅了してきた.20世紀後半には細胞系譜解析によって網膜における細胞分化の基本的な発生様式が明らかにされた.21世紀にかけては,分子生物学的なアプローチ,ならびにマウスやゼブラフィッシュなどの変異体を用いた解析から,網膜の発生や網膜細胞の分化をつかさどるマスター転写因子を含むさまざまな転写因子群が同定され,これら転写因子のカスケード制御が網膜発生メカニズムの本態であることが明らかになってきた.網膜発生制御に重要であることが明らかとなったさまざまな遺伝子は,その異常がヒトにおいて種々の眼科疾患の原因になっていることが明らかになるとともに,再生医学研究においても重要なツールや基盤となっている.さらに最近では,シングルセルRNA-seq解析などの技術を用いて得られた情報のバイオインフォマティックス解析により,網膜神経細胞の新たなサブタイプが発見されるなど,網膜発生に関するさらなる理解の飛躍が期待されている.
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