Japanese
English
TOPICS 再生医学
筋肉には胎児期の位置記憶が存在する
-――骨格筋の部位特異性に新たな視座
Adult skeletal muscles retain positional memory based on embryonic origin
小野 悠介
1
Yusuke ONO
1
1熊本大学発生医学研究所筋発生再生分野
pp.1099-1100
発行日 2022年6月11日
Published Date 2022/6/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu281111099
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骨格筋の大きさや形状は解剖学的に多様であり,またその機能も身体動作のみならず,姿勢維持,呼吸,咀嚼,嚥下,表情表出等と多岐にわたる.難治性筋疾患である筋ジストロフィーにはさまざまな病型が存在し,顔面肩甲上腕型,肢帯型,遠位型,眼咽頭型と型名のとおり,脆弱化しやすい身体位置は病型ごとに異なる1)(図1-A).また,加齢による筋量・筋力の低下(サルコペニア)も全身を通して均一には起こらない.これらの身体位置による症状は,従来からの骨格筋の分類として知られる筋線維タイプや身体活動様式だけでは説明できない.そのため,それぞれの病態解明に向けて,骨格筋の身体位置特異性を理解するための新たな視座が必要となっている.骨格筋の発生起源を遡ると,咀嚼筋など頭部筋の多くは頭部中胚葉由来,前脛骨筋などの四肢筋は体節由来である.このように発生の段階で筋肉の基となる細胞の起源は領域により異なる2).しかし,出生後,成熟した骨格筋の身体位置による特性と発生起源との関連についてはこれまで十分に議論されてこなかった.
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