Japanese
English
TOPICS 脳神経外科学
精神神経疾患に対する外科治療の国際的動向
International trends in surgical treatment of neuropsychiatric disorders
森下 登史
1
,
安部 洋
1
,
井上 亨
1
Takashi MORISHITA
1
,
Hiroshi ABE
1
,
Tooru INOUE
1
1福岡大学医学部脳神経外科
pp.342-344
発行日 2022年4月23日
Published Date 2022/4/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28104342
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精神外科の興り
精神神経疾患に対する脳手術(いわゆる “精神外科/psychosurgery”)は,1935年にポルトガルの神経内科医であるEgaz Monizがロボトミー手術(前頭葉白質切截術)を考案したことに端を発する.ロボトミー(lobotomy)とは “lobe(葉)” と “-otomy(切断)” を合わせた用語であり,前頭葉を脳から切り離すことを示している.本術式は統合失調症などに対し1940年代に多くの症例で行われたが,とくによく知られているのは精神科医のWalter Freemanであろう.Freemanは当初,脳神経外科医であるJames Wattsとともに前頭部に穿ったバーホールからleukotomeといわれる脳を切断するための器具を挿入し,前頭葉と脳深部構造との連絡を遮断する術式を用いていた.しかし,眼窩上縁よりアイスピック様の器具を脳内に挿入して左右上下に揺らすという,簡便な経眼窩的ロボトミー法を開発することで精神科医単独で手術を行うようになった.ロボトミー手術では,合併症により廃人と化した患者が少なくないことから社会的問題となった.そして1950年代以降,精神外科による人格変化という弊害が認知されるとともに,抗精神病薬の開発により徐々に精神外科は世界的に衰退した.
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