脳神経外科をとりまく医療・社会環境
ロボットスーツを用いたニューロリハビリテーション
森下 登史
1
,
井上 亨
1
Takashi MORISHITA
1
,
Tooru INOUE
1
1福岡大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, Fukuoka University
pp.355-359
発行日 2017年4月10日
Published Date 2017/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203509
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Ⅰ.はじめに
脳神経外科では脳卒中,脳腫瘍,そして脊髄疾患など幅広い領域における疾患を治療するが,これらの疾患の随伴症状や手術合併症をいかに改善させるかは,治療後の患者の日常生活動作と生活の質に大きく関わる問題である.そのため,本邦では脳神経外科医は救急医療や手術に関わるのみならず,ニューロリハビリテーションの分野でも大きな役割を果たしてきた.近年,保険診療におけるリハビリテーションの役割についても見直しが行われ,いかに“効果的な”治療が行われるかが重要視されるようになった.『脳卒中治療ガイドライン2015』の中でもロボットを用いた歩行訓練や,特定の動作の反復を伴った促通反復療法などの訓練が推奨されているのみならず,海外においては脊髄損傷による歩行障害の治療を目的としたロボットリハビリテーションに医療保険が適用されるなど,ロボットがニューロリハビリテーションの領域に及ぼす影響は年々大きくなっている.本邦においても2016年4月から一部の希少神経難病に対してロボットによる処置料が保険適用となっている.
リハビリテーション用ロボットにはさまざまなものが存在するが,その代表がHybrid Assistive Limb(HAL®:CYBERDYNE,茨城)である.HALは本邦において保険が適用されている唯一のロボットであり,さまざまな研究によってその効果が示されている.本稿では,HALを中心としたロボットリハビリテーションの現状と将来的な展望について記す.
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