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特集 免疫系の概日リズム
はじめに
Introduction
生田 宏一
1
Koichi IKUTA
1
1京都大学医生物学研究所免疫制御分野
pp.157-157
発行日 2022年4月9日
Published Date 2022/4/9
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28102157
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- Abstract 文献概要
概日リズム(体内時計)は神経,内分泌,消化,代謝,循環など,さまざまな生命活動をコントロールしている.近年,これらの生体機能に加え,概日リズムによる免疫系の制御機構が明らかにされている.概日リズムが,リンパ球自身の生物時計や交換神経の活動,糖質コルチコイドなどを介してリンパ球のリンパ器官への集積を促し,免疫応答能を高めるというものである.免疫系は,リンパ球や免疫細胞を全身のリンパ器官や粘膜・皮膚組織に配置し,外から侵入する病原微生物をすばやく排除する機能を担っている.そのため,リンパ球はリンパ組織と血液を常時から再循環することで,全身をくまなくパトロールしている.病原微生物の侵入は主に動物の活動時間に起こるため,免疫応答能に日内変動があるということは理にかなっている.インフルエンザワクチンによる中和抗体の誘導も,午前中に接種すると抗体価が高くなるという報告もある.さらに,早朝や運動後の喘息の好発,関節リウマチにおける朝のこわばりなどの免疫系と概日リズムの関係性が以前から知られており,概日リズムを考慮した病態の理解や投薬への応用が模索されている.
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