トコジラミ症（シラミではない，カメムシだ！）

Summary

　トコジラミという虫を身近に感じる人は少ない．名前からはシラミをイメージしやすいがカメムシの仲間である．日本には戦前から生息したが，昨今，被害が再び聞かれるようになった．人の血を吸い生きるため，われわれの身近に目立たないよう巣を作り生息している．就寝中に巣から出て人と接触し吸血が行われ，吸血が終わると巣へ帰っていくため被害にあったことに気づきにくい．原因不明の皮疹が出現したため病院を受診しても，単なる虫刺症として処理され駆虫が十分に行われず，延々と皮疹に悩まされることもある．外出先での被害であれば一過性であるが，虫体を持ち帰ってしまうと自宅で繁殖される恐れがある．駆虫には耐性を考慮した殺虫剤の選択と生態を理解した散布方法など工夫が必要であり，個人での駆虫が困難なケースでは専門業者に依頼することもある．今後，人々の移動とともに生息域を拡大していく恐れがあり，注意を要する．