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特集 今,数理が面白い――医学・生物学への応用
がん細胞の解糖系振動と悪性度診断への応用
Glycolytic oscillations in cancer cells and their application for the characterization of tumor malignancy
雨宮 隆
1
,
柴田 賢一
1
,
山口 智彦
2
Takashi AMEMIYA
1
,
Kenichi SHIBATA
1
,
Tomohiko YAMAGUCHI
2
1横浜国立大学大学院環境情報研究院
2明治大学先端数理科学インスティテュート
キーワード:
がん細胞
,
ワールブルク効果
,
解糖系振動
,
悪性度
Keyword:
がん細胞
,
ワールブルク効果
,
解糖系振動
,
悪性度
pp.183-187
発行日 2021年10月16日
Published Date 2021/10/16
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27903183
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がん細胞は糖代謝において解糖系を亢進することが知られている(ワールブルク効果).また最近の筆者らの研究により,がん細胞はグルコース飢餓を経ると代謝産物濃度を時間的に振動させながら糖代謝を行うことがわかってきた.このような糖代謝は解糖系振動とよばれていて,がん細胞と同様に解糖系を亢進する酵母細胞では,古くから知られていた.細胞実験と数理モデル研究から,解糖系を強く亢進するがん細胞ほど高い周波数で解糖系振動を起こすことが推論された.がん細胞の糖代謝に関する研究や疫学調査によれば,増殖,転移,治療抵抗性,5年生存率などの指標で診断される悪性度の高いがん細胞は解糖系を著しく亢進する.本稿では,がん細胞における解糖系振動の最新の実験と数理モデル研究を紹介し,解糖系振動を用いたがんの悪性度診断の可能性について述べる.
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