Japanese
English
特集 免疫チェックポイント分子による生体機能制御
Ⅱ.免疫チェックポイント分子とがん
細胞間シグナルCD47-SIRPα系を標的としたがん免疫療法
Cancer immunotherapy targeting the CD47-SIRPα signaling axis
村田 陽二
1
,
齊藤 泰之
1
,
的崎 尚
1
Murata Yoji
1
,
Saito Yasuyuki
1
,
Matozaki Takashi
1
1神戸大学大学院医学研究科生化学・分子生物学講座シグナル統合学分野
キーワード:
マクロファージ
,
がん細胞
,
貪食
,
CD47
,
SIRPα
Keyword:
マクロファージ
,
がん細胞
,
貪食
,
CD47
,
SIRPα
pp.211-217
発行日 2019年6月15日
Published Date 2019/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200986
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
がんの増殖,浸潤,転移といった生物学的特性には,がん細胞を取り巻く免疫細胞をはじめ,血管内皮細胞,線維芽細胞などの間質細胞で形成されるがん微小環境が重要な役割を果たすと考えられている1)。なかでも,免疫細胞とがん細胞との相互作用が,がん細胞の免疫監視からの回避にかかわることが知られている。例えば,T細胞に発現する免疫チェックポイント分子であるPD-1やCTLA-4は,がん細胞や抗原提示細胞上のPD-L1やCD80/86と結合し,腫瘍反応性T細胞の活性化を負に制御する2)。一方,これらの分子を標的とした薬剤が抗腫瘍剤として有効性を示すことが明らかとなりつつあり,がん免疫監視を負に制御する分子が,新たながん治療標的として期待されている。
最近,自然免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞に高度に発現する膜タンパク質SIRPαとがん細胞を含め組織普遍的な発現を示す膜タンパク質CD47とで形成される細胞間シグナルCD47-SIRPα系が,免疫チェックポイントとして機能し,がん細胞の生体内からの排除を抑制的に制御することが明らかとなってきた。また,このシグナル系を標的とした薬剤の有効性が前臨床研究や臨床試験において示されつつある。本稿では,この細胞間シグナルCD47-SIRPα系とこのシグナル系を標的としたがん免疫療法について概説する。
Copyright © 2019, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.