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第1土曜特集 自殺の予防と危機・救急対応――新たな局面を迎えた日本の自殺対策にどう対応するか
自殺予防研究の動向
診療報酬化された自殺予防医療
-――アサーティブ・ケース・マネージメント介入は自殺未遂者の自殺再企図・自傷行為を抑止する
Assertive case management intervention for suicide attempters:a medical treatment for suicide prevention adopted to the medical fee system
河西 千秋
1
Chiaki KAWANISHI
1
1札幌医科大学医学部神経精神医学講座
キーワード:
アサーティブ・ケース・マネージメント
,
自殺未遂
,
自殺予防
,
自傷
,
診療報酬制度
Keyword:
アサーティブ・ケース・マネージメント
,
自殺未遂
,
自殺予防
,
自傷
,
診療報酬制度
pp.12-17
発行日 2021年10月2日
Published Date 2021/10/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu2790112
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自傷・自殺未遂は強力な自殺のリスク因子であることが知られているが,これらの自損行為の再企図を抑止する方略については,長く世界的に難題であった.そこに,効果的な診療モデルを提示したのは日本の医療者であった.厚生労働科学研究費補助金事業として2005年から “戦略研究課題事業” が開始され,多施設無作為化比較試験である “ACTION-J研究” により,914名の自殺未遂者を対象に,研究班が開発した多職種協働によるアサーティブ・ケース・マネージメント介入が実施された.その結果,その介入プログラムが自殺未遂者の自殺再企図防止に有効であることが明らかとなり,セカンダリ・アウトカム解析により,大量服薬や自殺の意図のない自傷を含むすべての自損行為の発生を抑止し,DSM-Ⅳ・Ⅱ軸診断を併存する患者についても有効であることが検証された.同プログラムは,厚生労働事業を経て,2016年に, “救急患者精神科継続支援料” の名称で診療報酬化された.また,これに際して同介入プログラムを忠実に実施することのできる人材を養成するための教育プログラムが開発され,診療報酬算定要件研修会に位置づけられた.ACTION-J研究は精神医学史上,良質な精神保健福祉モデルが自殺関連行動を抑止しうることを科学的に証明した重要な事例となったが,高い技量を要する同プログラムを実践する医療者と医療機関に対する相応の評価がなされていないこと,同プログラムと地域自殺対策の緊密化,そして同プログラムの一般一次・二次救急現場への応用など,いくつもの課題が残されている.
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