連載 この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症・Vol.8
糞線虫症(渡航歴や居住歴,いつ・誰に・どのように聞きますか?)
細田 智弘
1
Tomohiro HOSODA
1
1川崎市立川崎病院感染症内科
キーワード:
糞線虫
,
自家感染
,
過剰感染症候群
,
奄美・沖縄諸島
,
渡航歴・居住歴
Keyword:
糞線虫
,
自家感染
,
過剰感染症候群
,
奄美・沖縄諸島
,
渡航歴・居住歴
pp.621-627
発行日 2021年5月22日
Published Date 2021/5/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27708621
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Summary
糞線虫症は,熱帯・亜熱帯地域を中心とした地域流行性の寄生虫感染症で,国内の主な流行地は奄美・沖縄諸島である.糞線虫は自家感染によってヒトの体内で生活史を完結することができるため,一度感染が成立すれば,流行地での持続的な曝露がなくても数十年以上にわたって持続感染することができる.糞線虫症は,慢性感染期にはしばしば症状が軽微かつ非特異的であるため診断が難しいが,基礎疾患の悪化や医原性の免疫障害を契機に過剰感染症候群に至ると,重篤な経過をたどることがある.慢性的な消化器症状を訴える患者に好酸球上昇がみられた場合や,これから何らかの免疫抑制を行おうとする患者に,出生時にまでさかのぼって糞線虫症の流行地への渡航歴や居住歴を問診することが重要である.また通常は検出されることが稀な髄液中に腸内細菌を認めた際に,糞線虫の過剰感染症候群を疑って,糞便の直接塗抹法検査などを繰り返し行うことが重要である.
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