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第1土曜特集 1細胞解析――技術と応用
応用
1細胞解析からわかる循環器病態
Cardiovascular pathology revealed by single cell analysis
野村 征太郎
1
Seitaro NOMURA
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科
キーワード:
心不全
,
心筋梗塞
,
分子病態
Keyword:
心不全
,
心筋梗塞
,
分子病態
pp.1011-1021
発行日 2021年3月6日
Published Date 2021/3/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu276101011
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循環器疾患とは,全身に血液を送り届ける心臓・血管といった循環器臓器における疾患である(図1).心臓は常に血行力学的なストレスを受けており,それが病的なものになると心臓機能の低下につながり,心不全を発症する.心臓は自らにも冠動脈を経由して血液を届けているが,その冠動脈の血流が途絶えると心筋梗塞を発症して急激な心臓機能の低下につながる.心臓では電気的活動によって心筋細胞の収縮が制御されているが,それに異常が生じると心房細動などの不整脈を発症する.これらの循環器疾患がどのようにして発症するかに関してさまざまな研究が行われてきたが,心臓という臓器を一括にして解析してきたこれまでの研究では,細胞レベルの本質的な分子挙動を明らかにすることは難しかった.心臓には,ポンプ作用の中心である心筋細胞に加えて,線維芽細胞,内皮細胞,平滑筋細胞,免疫細胞などが存在しており,それらが互いに相互作用を形成している.近年になって発展してきた1細胞解析技術によって,循環器疾患におけるこれらの細胞の分子挙動を1細胞レベルで詳細に解析することが可能になってきた.本稿では心不全,心筋梗塞,不整脈,臨床応用という4つの観点から1細胞解析によって明らかとなった循環器疾患の分子病態をレビューするとともに,今後の将来展望について議論したい.
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