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第5土曜特集 糖尿病治療・研究の最前線2021
基礎研究
肝臓における “選択的インスリン抵抗性” の分子機構
Molecular mechanism of “selective insulin resistance” in the liver
窪田 直人
1
,
窪田 哲也
1
,
門脇 孝
1
Naoto KUBOTA
1
,
Tetsuya KUBOTA
1
,
Takashi KADOWAKI
1
1東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科
キーワード:
肝臓
,
2型糖尿病
,
選択的インスリン抵抗性
,
インスリン受容体基質(IRS)
Keyword:
肝臓
,
2型糖尿病
,
選択的インスリン抵抗性
,
インスリン受容体基質(IRS)
pp.394-400
発行日 2021年1月30日
Published Date 2021/1/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27605394
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肝臓は糖・脂質代謝において中心的な役割を果たしている臓器のひとつであり,インスリンは糖産生を抑制し脂肪合成を促進する.実際,肝臓特異的インスリン受容体欠損マウス1)や,肝臓特異的インスリン受容体基質(IRS)-1/IRS-2ダブル欠損マウス2),肝臓特異的Akt2KOマウス3)では,いずれも糖産生の亢進と脂肪合成低下が認められる.一般に肝臓におけるインスリン抵抗性とは,インスリン作用障害のために血中のインスリンレベルは高いにもかかわらず,肝糖産生を抑制できていない病態を指す.ところが2型糖尿病では,しばしば空腹時の高血糖と脂肪肝の合併が認められる.これはインスリン作用の面からみると,肝臓における糖産生抑制は障害されているものの,脂肪合成に関してはむしろ亢進しているという,一見相反する病態である.この現象は糖代謝においてのみインスリン抵抗性(糖産生の抑制障害)を呈していることから,“選択的インスリン抵抗性” といわれ,総説などにも広く取り上げられているが4),その分子機構はいまだ十分に解明されていない(図1).
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