案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
鉄剤点滴漏れによる色素沈着
向井 秀樹
1
1東邦大学医療センター大橋病院皮膚科
pp.562-563
発行日 2024年6月1日
Published Date 2024/6/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000003843
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・30歳代,女.陣痛発来にて入院.自然破水にて吸引分娩を開始.会陰切開にて3,330gの男児娩出.吸盤に凝血あり,出血が多く血液検査を施行.ヘモグロビン(Hb)濃度10.4g/dL,白血球数10,800/mL,CRP0.22mg/dL.
・院長に分娩出血量が多いことを報告.夜間帯ではあるが,モノヴァー®(500mg)5mLと生理食塩水100mL点滴静注の指示を受ける.
・卒後2年目の看護師が,ベットサイドのライトのみを点けて左肘内側より点滴開始.当初,患者は刺入部に違和感を覚えるも,痛みは少なく20分後に抜針.翌日看護師は,刺入部から中枢側にかけて若干青みのある色素沈着に気づく.院長に報告.
・退院時,左肘内側より上腕部にかけて6×9cm大の青色調のある色素沈着が顕著になる.点滴漏れによる皮膚障害として謝罪.製薬メーカーに問い合わせたところ,時間が経てば自然に薄くなる例もあり,経過観察が必要であるとのことで皮膚科受診を勧奨される.
・半年後に母親と来院.色素沈着は改善せず,皮膚科医に受診するも経験がなく,経過をみるようにいわれた.
(「経過」より)
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