案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
点滴漏れによる色素沈着
向井 秀樹
1
1東邦大学医療センター大橋病院皮膚科
pp.732-733
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000003472
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・10歳代,女性.運動部の次の試合が近づいているが,頭痛や全身倦怠感を訴える.顔色が悪かったため,部のコーチは内科受診を勧奨.診察にてアスリートによる溶血性貧血を考え,血液検査を施行した.フェジン®40mg 2A,ビタミンB12 500µgを静注.内服薬はフォリアミン®(葉酸)20mg内服.2日間,上述の注射を行うも効果はなし.
・初診から1週後,生食100mL+フェインジェクト®500mgを,左肘内側より点滴.数分後に痛みがあり,看護師が点滴漏れに気づき,右手に刺し替える.内服としてビタミンB12 1,500µg投与.
・2週後,当日朝の寝起きはよかった.フェインジェクト®静注2回目投与.来院時に青あざ様に液漏れ痕が残存.時間が経てば消えると説明される.
・2カ月後,左肘を中心に広範囲な色素沈着が残存.4カ月後も色素沈着は不変.
・8カ月後,母親と受診.色素沈着に関して,皮膚科専門医への紹介を希望され,紹介状を作成する.
・上級施設皮膚科を受診.海外ではレーザー治療を行っているが,明らかな有用性は検証されていない.当院では治療する予定はなく,終診となる.
(「経過」より)
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