案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
糖尿病性皮膚潰瘍による膝下切断
向井 秀樹
1
1東邦大学医療センター大橋病院
pp.1114-1115
発行日 2022年12月1日
Published Date 2022/12/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000003109
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・60歳代男性.元来冷え性のため,冬場は湯たんぽを足元に置いて就寝する.1カ月前より左第I趾先端にある12mm大の白色局面に気づく.自覚症状はなし.とくに治療はせず放置,次第に褐色調となり皮膚科受診.
・20年来,高度肥満と糖尿病あり.近くの内科医に通院するも,HbA1cは10.0%と高値.5年前に糖尿病性神経障害があり,下腿末梢側の知覚障害を認める.
・初診時に,メスで壊死部を切開しデブリードマンを施行.切開により膿を排出,潰瘍を認める.消毒後は抗菌薬外用薬を塗りガーゼで創部を保護する.その後,定期的に外用処置を行う.潰瘍は赤色肉芽面になり,外用をフィブラストスプレーやプロスタグランディン軟膏に変更.
・いったん軽快傾向を示すが,上皮化が進まない.ときに,潰瘍周囲に明らかな発赤と腫脹を認める.潰瘍面の拡大はないが,下床にポケットの存在を認める.
・経過中に一度細菌培養を行い,MRSAや緑膿菌を検出.感受性のある抗菌薬内服や点滴を行う.
・数日前から,39℃前後の発熱と下腿の痛みがあり受診.蜂窩織炎を疑い,抗菌薬点滴を施行.上級施設への紹介を希望するも,心配ないと帰宅させる.
・発熱と痛みが強く,救急車で上級施設の救急外来を受診し緊急入院.切開し多量の排膿あり,抗菌薬を点滴する.レントゲンで骨髄炎像あり.血流も悪く保存療法では限界とされ,整形外科で膝下を切断する.
(「経過」より)
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