私の視点
強皮症の血管病変はなぜ生じるのか?
佐藤 伸一
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1東京大学大学院医学系研究科皮膚科学
pp.658-658
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002554
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強皮症では,80%以上の患者がRaynaud症状を初発症状とし,また指尖部の潰瘍(図)をしばしば伴う.この強皮症という難病を専門にして30年以上,強皮症には,なぜこのような血管病変が生じるのか常に疑問に思ってきた.強皮症の病態は①自己抗体産生,サイトカイン産生亢進などの免疫異常,②皮膚硬化や肺線維症などの線維化,③Raynaud症状,皮膚潰瘍,肺高血圧症,強皮症腎クリーゼなどの血管病変からなる.さまざまな研究の結果,免疫担当細胞から産生されるIL-6などのサイトカインが線維芽細胞を刺激して,コラーゲンの産生を亢進させ線維化を誘導すると広く考えられているが,血管病変についてはどのような機序で生じているのかはいまなお不明である.とくに,寒冷刺激によって発作的に症状が発現するようなRaynaud症状を強皮症の病態の中でどのように位置づければよいのかについては私の中で大きな謎であった.
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