- 有料閲覧
- 文献概要
皮膚疾患には心理社会的要因の関与したものや,自律神経の関与したものが少なくない.アトピー性皮膚炎,慢性蕁麻疹,円形脱毛症,限局性多汗症,乾癬,痤瘡などがとくに関与が大きいと考えられる.その詳細な作用機序は不明だが,臨床的に関与がみられる.このようなときに不安を軽くしたり,イライラを抑えたり,自律神経の失調状態を改善したりするのに,抗不安薬の併用が有用である.著名な精神皮膚科医のJYM Koo先生も向精神薬の皮膚科的利用を述べている.とくに慢性蕁麻疹では筆者が以前にその有用性を報告している.抗不安薬のほとんどはベンゾジアゼピン系であり,昨今ではその依存性が問題となっている.しかし併用することで皮膚疾患の症状が軽くなったり,消失したりすれば患者のQOLは改善するため,筆者はよく使用している.
抗不安薬を使うに際して注意すべきことは,副作用を知ることである.眠気やふらつき,口渇,尿閉があったり,狭隅角の患者では眼圧上昇などがある.ゆえに自動車運転や転倒,嚥下困難,前立腺肥大症患者,緑内障患者などについて注意が必要である.またこれらは抗ヒスタミン薬の副作用と似ている.ただしベンゾジアゼピン系薬剤と抗ヒスタミン薬では発症機序が異なるため,副作用の生じやすさについては,それぞれの薬剤について確認が必要である.皮膚科ではこれらを併用することになるが,その副作用の増強に注意すべきである.抗ヒスタミン薬は非鎮静性のものを選択するなどで回避するのがよい.抗不安薬は表のように多数あるが,この中で筆者のお勧めは,アルプラゾラムとクロチアゼパムである.アルプラゾラムは精神症状のほかにとくに身体症状に効果があり,クロチアゼパムは副作用が比較的少ないのが特徴である.初心者はまずクロチアゼパムから用いることをお勧めする.肝臓の負荷を避けたい場合はロラゼパムの少量からをお勧めする.
Copyright © 2021, KYOWA KIKAKU Ltd. All rights reserved.