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抗PD-1抗体製剤は免疫チェックポイント阻害薬の1つであり,日本国内ではニボルマブ(オプジーボ®),ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)が承認されている.PD-1は,活性化T細胞上に発現し,T細胞の免疫応答を負にコントロールする受容体である.PD-1のリガンドであるPD-L1およびPD-L2は,抗原提示細胞などの正常細胞に発現するだけでなく,癌細胞にも発現がみられ,T細胞活性化を抑制している1).ここでニボルマブなどの抗PD-1抗体が作用しPD-1をブロックすることによりT細胞活性化の抑制が解除され,T細胞が再活性化し,癌細胞に対する腫瘍免疫も回復することで抗腫瘍効果がみられると考えられている2).抗PD-1抗体製剤の適応疾患は悪性黒色腫のほか,切除不能な進行・再発性の非小細胞性肺癌・腎細胞癌・頭頸部癌・胃癌など多岐にわたる.そのため使用頻度の増加に伴い,さまざまな有害事象が報告されている.
抗PD-1抗体による皮膚障害に関しては2016年にHofmannらが報告している3).転移性悪性黒色腫患者496人にanti-PD-1 therapyを実施したときの有害事象を調査し,43人(8.7%)の患者で皮膚障害出現がみられた.皮膚瘙痒症・湿疹が19人(3.8%)と最多であり,白斑がそれに引き続き13人(2.6%)にみられている.また,白斑の出現は予後良好因子として報告されている.乾癬様皮疹や苔癬型反応といった,臨床的に紅斑性角化性局面を呈する皮疹も少数ながら報告されているが,生命予後との関連は不明である.
これまで抗PD-1抗体製剤により乾癬様皮疹を呈した症例に関して,臨床的な特徴は2017年にVoudouriらが報告している4).約半数の症例で乾癬の既往があり,皮疹としては局面型・滴状型の乾癬様皮疹を呈することが多く,まれではあるが関節炎を伴う症例も認めた.治療としてはステロイド外用や紫外線療法に反応する症例が多いが,関節炎を伴った症例では少量メトトレキサート(MTX)内服が導入された例も認めた.大多数の症例で抗PD-1抗体製剤による治療は継続可能であった.しかしこの報告では病理組織学的な検討はなされていなかった.
これまで,抗PD-1抗体製剤投与後に臨床的に苔癬型・乾癬様皮疹と診断された症例で,詳細な病理組織学的・免疫組織学検討が行われた報告は,先の報告を含め調べたかぎりではなかった.よって今回われわれは抗PD-1抗体製剤投与後に紅斑性角化性局面を呈した症例に関して,その病理学的特徴および発症機序について検討をした.
(「はじめに」より)
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