特集 脂腺の病気
Editor's eye
馬場 直子
pp.1071-1071
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002672
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新生児から思春期ごろまでの子どもの皮膚をみていると,個人差はあれ皮脂量が年代によって異なり,それに伴って疾患も変化することを実感する.まず,新生児期は一過性に皮脂分泌が亢進し,新生児痤瘡や乳児脂漏性皮膚炎を生じるが,この時期が過ぎると皮脂分泌は急速に低下し,幼児期,学童期前半まで生涯でもっとも皮脂分泌が少なく乾燥肌となり,アトピー性皮膚炎の有病率が高くなる.思春期が始まると皮脂腺が活発に働き始め,皮脂が増えてくるとアトピー性皮膚炎が軽快するとともに,過剰な皮脂産生により痤瘡ができる.老齢期では再び皮脂腺の働きが少なくなり皮脂欠乏性皮膚炎が生じる.このように大雑把に理解していた皮脂腺の役割や病態について,最近の研究でわかったことや病理組織にもスポットを当て,脂腺の病気・病態について認識のリニューアルを試みた.
「Topics」では「脂腺と皮膚バリア」と題して,皮脂腺の機能と構造における新知見が示された.脂腺は最外層の脂腺細胞が崩壊し,皮脂を含む内容物を放出する全分泌を行っており,皮膚表面につくられた薄い皮脂膜は,生体の乾燥抑制のみならず,紫外線防御,抗菌,抗酸化にも寄与しているという.これまで脂腺において表皮のようなタイトジャンクションが存在するか否かは知られていなかったが,脂腺の最外層にもタイトジャンクションバリアが存在し,漏洩を防いでいることが発見されたことは非常に興味深く驚きである.
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