特集 これだけは知っておきたい間葉系腫瘍
Editor's eye
向井 秀樹
pp.373-373
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002014
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間葉系腫瘍は,発生の初期に内・外胚葉の間に落ち込んだ細胞からなる組織であり,支持組織(結合組織,脂肪組織,軟骨・骨,血液やリンパ)や筋組織が分化した腫瘍である.同じ範疇の軟部腫瘍は,間葉系の軟骨・骨,血液やリンパを除き,末梢神経を加えたものをいう.間葉系腫瘍の大部分は良性腫瘍であるが,今回の特集号には皮膚線維腫が多発している例に膠原病を併発,多発性の平滑筋腫例には遺伝性で腎細胞癌を併発することがあり興味深い.
間葉系悪性腫瘍はH-E染色だけでは診断がつかず,数々の免疫組織所見を総括して診断することが多い.以前は,電子顕微鏡像が掲載されていたが,免疫組織の染色法の台頭により姿をみなくなった.Topicsである“Merkel細胞癌”は高齢者の露出部に好発するが,多彩な臨床像を呈し良性と誤診されることもある.最近,新種のポリオーマウイルスが本症の8割に検出され発癌との関連性が明らかになった.それ以来,本腫瘍の研究は飛躍的に発展しており,治療法を含めて解説がわかりやすい.皮膚血管肉腫は高齢者の頭頸部に好発し予後は極めて悪い.先人の苦労により治療法が確立され延命効果は上がったが,今後免疫チェックポイント阻害薬などが開発・研究され画期的な治療法ができることを願っている.臨床像をみながら疾患の解説を読んでいくと,間葉系腫瘍も意外におもしろい.是非とも明日からの診療に役立てていただきたい.
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