特集 新時代を迎えたアトピー性皮膚炎
Editor's eye
向井 秀樹
pp.829-829
発行日 2020年10月1日
Published Date 2020/10/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002149
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アトピー性皮膚炎(AD)の患者数は,厚生労働省の調査によると2008年の35万人が2017年には51万人と,近年急増傾向にある.『AD診療ガイドライン2018』では診断治療アルゴリズムに重症・最重症・難治性状態の治療法として,ランクの高いステロイド外用薬,シクロスポリン内服,紫外線療法や心身医学的療法の併用をあげている.治療の基本は適切かつ十分なステロイド外用療法であるが,2018年4月から新しい生物学的製剤(バイオ)であるデュピルマブ(Dup)が発売され,従来の治療法を遥かに凌駕する高い有用性を示している.
今回の特集号はDupが主役である.発売されて2年が経過した長期データとしてのAD62例の1年間の治療統計をみると,EASI75およびEASI90達成率の驚異的な数字が目に入る.Dup治療による最多の副作用はDup関連結膜炎である.その発症機序はゴブレット細胞からのムチン産生低下とされているが,その細胞分布の違いや治療法が参考になる.Dupは皮疹を改善するが,発汗作用への影響,高齢者,内因性ADや合併した円形脱毛症にも有用なのか,読み進めていただきたい.Dupの有用性をあげるには,ADの基本的な治療法である悪化因子の検索と対策が不可欠である.乾癬を含めバイオが重症治療の主役になりつつあるが,バイオ投与による臨床像の変化も興味深い.日常診療で疑問であったタクロリムス外用による痒み,シクロスポリンの上手な治療法,ADに併発する症状,ステロイド長期内服による重大な副作用や今後期待される新しい治療法など,実に興味の尽きない特集号に仕上がっている.
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