topics
皮膚バリア、最近の進歩 ケルビン14面体モデル
横内 麻里子
1
,
久保 亮治
1慶応義塾大学 医学部皮膚科学教室
キーワード:
細胞間接合部
,
皮膚
,
トランスジェニックマウス
,
密着結合
,
角質層
,
多光子蛍光顕微鏡検査法
Keyword:
Intercellular Junctions
,
Mice, Transgenic
,
Skin
,
Tight Junctions
,
Microscopy, Fluorescence, Multiphoton
pp.808-813
発行日 2017年8月1日
Published Date 2017/8/1
DOI https://doi.org/10.24733/J01268.2017324024
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
哺乳類皮膚のバリアは,角質バリアとタイトジャンクション(TJ)バリアの二重のバリアを備えている.皮膚のバリアが正しく維持され機能することで,私たちの体は外界からの物理的な刺激や病原体・アレルゲンなどの侵入から守られている.健康なヒトの皮膚の細胞は1時間あたり2億個,1日にはおよそ50億個が,新陳代謝に伴い皮膚から剝がれて垢となって失われていく.皮膚のバリア構造と機能を保ったまま,バリアを構成する細胞自身はどのように入れ替わっていくのか.この謎をとく鍵は,表皮細胞の“かたち”にある.TJバリアを形成する顆粒層の表皮細胞は,“ケルビン14面体”と呼ばれる特殊な多面体を平たくした形であり,お互いに組み合わさって頑丈で幾何学的に規則正しい構造をなす.さらにこの形をうまく利用して,規則的な順序で細胞が入れ替わることにより,バリア構造を保ったまま細胞が新陳代謝していくことを可能にしているのである.これまで,一般的に(筆者も含め)表皮細胞は扁平な6角柱であると認識されてきた.しかしながら,この従来のモデルを用いてバリアと細胞のターンオーバーの関係を考えたとき,実際の観察結果との矛盾が生じ,発想の転換からケルビン14面体モデルの解明に至った.本稿では,表皮細胞間の結合と位置関係を保ったまま,細胞の入れ替わりを可能にするメカニズム “ケルビン14面体モデル”について概説する.(「はじめに」より)
Copyright© 2017 KYOWA KIKAKU Ltd. all rights reserved.