特集 小児医療者のための虐待の知識
虐待による頭部外傷に関する諸問題
荒木 尚
1
Takashi Araki
1
1埼玉県立小児医療センター外傷診療科
pp.1150-1155
発行日 2024年11月25日
Published Date 2024/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001005
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はじめに
「不慮の事故」は1〜9歳の子どもの死因の第2位であり(平成29(2017)年度厚生労働省人口動態統計),頭部外傷は致命傷として転帰に大きく関わる。児童相談所への虐待に関する年間相談件数は15万件(平成30(2018)年度)に及んでおり,虐待による頭部外傷(abusive head trauma:AHT)は2歳以下の重症頭部外傷の原因として最多である。急性硬膜下血腫と脳浮腫,網膜出血の三徴候を伴う場合AHTが強く疑われてきたが,多様な病態は不明な点も多く,再現性のある実験モデルが求められてきた。AHTは集学的治療にもかかわらず転帰不良であり,神経学的後遺症を余儀なくされることが多い。近年の多施設研究では,ガイドラインに準拠した治療と積極的リハビリテーションが機能回復に有効と結論された。これらの医学的知見はAHTに関する司法判断に与える影響が大きく関係者の注目が集まっている。
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