特集 希少固形がんの診断と治療
がんの母子移行
荒川 歩
1
Ayumu Arakawa
1
1国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科
pp.851-853
発行日 2023年8月25日
Published Date 2023/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000541
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はじめに
母親からのがんの児への移行は,担がん状態の母親50万例に1例程度に起こると考えられている1)。近年,1,000出産に1例は母親が担がん状態であると報告されていることを考えると,非常にまれな現象であることがわかる。われわれの報告を除くとこれまでに18例の英文での報告がある2)。これらはすべて,担がん状態の母親から妊娠中に胎盤と臍帯を経由して胎児へがんが移行するという現象で,古くは1940年代から報告されている。内訳としては,白血病が6例,メラノーマが8例,肺がんが3例,子宮頸がんが1例だった。これらの症例はすべて2歳未満に発症しており,メラノーマの2例においては腫瘍の自然退縮が観察された。また,母親や胎盤由来の絨毛がんが胎児に移行することによって発症したと考えられる乳児絨毛がんの報告もある3)。
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