症例
単純MRI画像から診断に至った腰背部痛を伴わない運動後急性腎不全の1例
増田 芙久子
1
,
安藤 将太郎
1
,
鈴木 健史
1
,
林 誠司
1
,
長井 典子
1
,
池住 洋平
2
,
市田 公美
3,4
MASUDA Fukuko
1
,
ANDO Shotaro
1
,
SUZUKI Takeshi
1
,
HAYASHI Seiji
1
,
NAGAI Noriko
1
,
IKEZUMI Yohei
2
,
ICHIDA Kimiyoshi
3,4
1岡崎市民病院小児科
2藤田医科大学医学部小児科学
3東京薬科大学病態生理学教室
4JR東日本千葉健康推進センター
pp.1215-1220
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002570
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はじめに
運動誘発性の急性腎不全は,横紋筋融解症を伴うミオグロビン尿性のタイプと非ミオグロビン尿性のタイプの二つに分類される。運動後急性腎不全という場合は後者を指すことが多く,その特徴的な臨床像からacute renal failure with severe loin pain and patchy renal ischemia after anaerobic exercise(ALPE)とよばれる。その名の通り,無酸素運動後に生じる非ミオグロビン尿性の急性腎不全で,初発症状として腰背部痛を伴い,斑状の腎虚血を特徴とする1)。1982年に石川らが報告し,2002年にALPEとしてまとめられ,宿主要因として腎性低尿酸血症との関連が指摘されている2)。診断には造影剤を使用したdelayed CTが有用だが3),同疾患では腎機能低下が医学的にもっとも重要な問題点であり,造影剤による腎機能への影響については十分配慮する必要がある。CTについては被曝の問題があり,さらに造影剤アレルギー既往のある患者やほかの病態が除外しきれない非典型症例では,造影剤の使用がためらわれるケースも考えられる。そうした状況のなか,造影剤を使用したdelayed CTとは別の画像検査によりALPEの診断にいたった症例が報告されている4,5)。

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