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1 検査の意義と適応
感染性胃腸炎(infectious gastroenteritis)は,さまざまな病原微生物が原因によるものを含む症候群である。感染性胃腸炎の原因となる病原微生物を(表1)に示す。感染症サーベイランスではウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を一括したものであるが,主にウイルスを原因とする胃腸炎の総称と考えてよい。原因となるウイルスには,ノロウイルス(Norovirus),ロタウイルス(Rotavirus),アデノウイルス(Adenovirus),サポウイルス(Sapovirus),アストロウイルス(Astrovirus)などがある。ウイルス性胃腸炎の主な症状は腹痛,下痢,嘔吐,発熱で,冬場に流行する代表的な感染症で,とくにノロウイルスを原因とする場合,保育所・学校や病院,老健施設など集団生活の場で大規模なアウトブレイクをひき起すこともあり,流行期を迎える冬場には予防を中心とした感染対策が必要である。また保育園・幼稚園・学校等で集団生活を送る小児は食中毒に罹患する機会も多い。消化管感染症と食中毒は重複する点も多いが,厳密には両者は異なる。食中毒は必ずしも感染を伴わなくてもよいが,消化管感染症は,病原微生物がヒトの消化管に侵入・定着・増殖して発症する疾患であり,飲食物を介した感染以外にヒト-ヒト間の二次感染も含まれる。病原微生物を検出するための検査は,(下痢)便,吐瀉物,血液だけでなく摂取食品や飲料水を検体として用いる1)。下痢,嘔吐,発熱,腹痛などの症状を呈し,感染性胃腸炎に対する検査を(表2)2)に示す。嘔吐・下痢・発熱の臨床症状のみから確定診断はできないが,季節,児の生活環境での流行状況,年齢,便の性状などから総合して臨床診断を推定することができるが,必要最小限の検査を侵襲性の低い順に実施するように心がける。基本的には患児の便検査が重要で,便性は大きく,普通便・軟便・泥状便・水様便に分類される。
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