特集 小児の渡航医学
各論
渡航関連感染症
蚊媒介感染症(デング熱,チクングニア熱,ジカウイルス感染症)
水野 真介
1
MIZUNO Shinsuke
1
1兵庫県立こども病院感染症内科
pp.960-964
発行日 2024年6月1日
Published Date 2024/6/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001721
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はじめに
英国のRare and Imported Pathogens Laboratoryで行われた帰国者約53500人から提供された約74000検体の解析による病原体の検出頻度は,デング熱,チクングニア熱,ジカウイルス感染症,レプトスピラ症,紅斑熱群リケッチアの順に多かったと報告されている1)。日本においてもデング熱は渡航感染症としてもっとも頻度の高い疾患の一つである。デング熱,チクングニア熱およびジカウイルス感染症は代表的な蚊媒介感染症であり,いずれも雌のヤブ蚊(Aedes spp.)[主にネッタイシマカ(Aedes aegypti)とヒトスジシマカ(Aedes albopictus)]によって媒介される。ネッタイシマカは生活で使われる小さな人工容器に貯まる水で繁殖することができ,都市部で流行がみられる。かつては国内でも沖縄県や小笠原諸島にネッタイシマカが生息していた。現在,国際空港のターミナルビル周辺や貨物船の機内で発見される事例が報告されている。ヒトスジシマカは本州から四国,九州,沖縄まで広く分布しており,2014年8月に東京都立代々木公園周辺への訪問歴のあるデング熱の国内感染例が多数確認された。その後は,海外からの輸入例のみであったが,ラグビーワールドカップが開催された2019年に,京都・奈良の神社仏閣へ修学旅行に出かけた10代のデング熱の国内感染例が3例報告された。今後も2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)を筆頭に訪日外国人が増加するイベントが控えており,蚊媒介感染症の輸入感染症例および国内感染例に対する備えが重要である。
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