特集 小児の渡航医学
各論
渡航前の相談
国内外を問わず “越境” する人々の健康を守るために周知すべき情報
三島 伸介
1,2
MISHIMA Nobuyuki
1,2
1関西医科大学総合医療センター総合診療科・感染症内科
2関西医科大学総合医療センター海外渡航者医療センター
pp.935-939
発行日 2024年6月1日
Published Date 2024/6/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001715
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はじめに
国境を越える人々は実に多種多様な目的をもっていると考えられるが,そうした方々に共通して認識しておいていただきたい優先事項は,目的地に関するさまざまな情報を事前に収集しておくことである。しかしながら,アフリカ大陸全体を周遊する人がマラリアの感染リスクを認識していなかったということは,しばしば見聞する話である。それぞれの目的地にはその土地固有の文化,風土,風習があり,衛生状態も渡航者が生まれ育った場所とは異なるものである。また,高度差や気象条件なども,渡航・滞在する者の健康状態を保つためには重視すべきポイントである。交通法規を含めた道路事情や交通インフラも軽視できない。渡航医学に携わる医療専門職としては,事前に収集しておくべき数多の情報のなかでも,渡航者の健康被害を最小限とするために必要な健康に関連した情報提供を行う責務がある。ここで強調しておきたい私が認識するところの渡航医学の特徴は,渡航者をリスクから単に回避させるのではなく,1人1人の渡航者の希望に寄り添えるようある程度のリスクと渡航者が共存する形で医学的サポートを行うことである。これを念頭に,渡航者に対して提供するべき情報について記述する。
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