特集 完全把握をめざす小児の心疾患
先天性心疾患(各論)
Ebstein病
馬場 健児
1
BABA Kenji
1
1岡山大学病院IVRセンター小児循環器
pp.559-562
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001608
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
疾患の概念
Ebstein病は,1866年にWilhelm Ebsteinにより三尖弁中隔尖・後尖の右室内心尖部方向への偏位により三尖弁閉鎖不全をきたす疾患として初めて報告された。Ebstein病では,弁輪近位部の心内膜面が弁尖部分から弁輪部に向かって消失するdelaminationの不全のために,弁輪に近い部分の三尖弁が心室内壁に張り付いたようにみえる漆喰様(plastering)とよばれる状態を呈し,弁尖付着部が心尖部方向に偏位する。このdelaminationは前尖が胎生35日ごろ,中隔尖と後尖は胎生3か月ごろと前尖から生じるため,delamination不全は中隔尖,後尖に限局することが大半だが,前尖もdelamination不全をきたす重症例も存在する。delamination不全の部分の心筋が菲薄化,異形成し,本来の弁輪と実際の三尖弁付着部位の間に右房化右室(atrialized right ventricle)を形成する。右房化右室は壁がきわめて薄くなるUhl化をきたし,右房とともに著明に拡大する。右室は三尖弁によって三尖弁付着部位より心尖部および流出部からなる機能的右室と右房化右室に分割され,機能的右室は偏位の重症度に伴い低形成となり,機能的右室もUhl化した心筋となる場合もある。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.