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はじめに
ビタミンKには,植物由来のビタミンK1(フィロキノン)と主に細菌により合成されるビタミンK2(メナキノン)の2つの形態が存在する。ビタミンK依存性血液凝固因子であるプロトロンビン(第Ⅱ因子),第Ⅶ因子,第Ⅸ因子,第Ⅹ因子,さらには血液凝固制御因子であるプロテインC,プロテインS,プロテインZの肝臓での産生の際,ビタミンKはカルボキシル化酵素(ビタミンK依存性カルボキシラーゼ)の補酵素として働く。ビタミンKは血液凝固だけでなく,細胞周期調節や細胞接着,骨芽細胞からのオステオカルシン産生にも重要な役割を担っている。一方,ビタミンKの胎盤移行や母乳中の含量はごく少量であるため,新生児期に適切な補充がなされないとビタミンK欠乏性出血症(vitamin K deficiency bleeding:VKDB)のリスクが上昇する。特徴的な臨床症状として,皮膚のあざ,消化管や臍部など粘膜表面からの出血や頭蓋内出血が挙げられる。生後24時間以内にみられる早発型では,ビタミンK反応をブロックする薬剤(抗けいれん薬,ワルファリンやクマリン様抗凝固薬,セファロスポリンなどの抗菌薬,抗結核薬)の母体への投与が関連することがある。ビタミンK投与が不十分な場合,古典的VKDBとして生後1~4週の間に発症することが多い。遅発型VKDBは通常生後3~8週の間に発症し,頭蓋内出血の頻度が高く,胆道閉鎖症など脂肪吸収障害を伴う消化器肝臓疾患や,抗菌薬使用が関連することもある。ビタミンK欠乏時の検査結果として,プロトロンビン時間と活性化部分トロンボプラスチン時間の両者が延長する。第Ⅱ因子,第Ⅲ因子,第Ⅹ因子活性を反映するヘパプラスチンテストも延長する。また,ビタミンK欠乏時に出現するプロトロンビンであるPIVKA-Ⅱ(protein induced by vitamin K absence or antagonists-Ⅱ)が高値を示す。
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