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はじめに
夜尿症(nocturnal enuresis:NE)は,国際小児尿禁制学会において,5歳以上の小児の夜間睡眠中の尿失禁と定義される1)。また,頻尿や昼間尿失禁などの下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)の有無により,単一症候性NE(monosymptomatic NE:MNE)と非単一症候性NE(non-monosymptomatic NE:NMNE)に分類される2)。これまでNEは治療開始前に自宅で夜間尿量と我慢尿量を測定してもらい,「多尿型」,「膀胱型」,「混合型」に病型分類がされてきた2)。病型分類によって,多尿型にはデスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠(1-desamino-8-D-arginine vasopressin:DDAVP),膀胱型には抗コリン薬やアラーム療法,混合型にはDDAVPとアラーム療法を組み合わせた治療といった具体的な治療を選択することができるといった利点がある2)。しかし,病型を決定するまでに時間を要してしまい早期に治療を開始できないことや膀胱型と分類された場合,エビデンスのあるDDAVPが初回から選択されない可能性があるなどの欠点もある。また,夜尿症を専門としていない医師が診療に携わる機会も多く,病型分類は必ずしも行われてはおらず,最近病型分類は必須とはされていない。NMNEではLUTSの治療が優先され抗コリン薬が使用されることもあるが,MNEよりも治癒率は低い3)。また多剤併用療法でも改善しない難治性NEが存在し,夜間の低膀胱容量や過活動膀胱(overactive bladder:OAB)が原因であると指摘されている3~4)。成人のOAB治療において近年主流になりつつあるビベグロンは新規β3アドレナリン受容体(β3-AR)作動薬であり,小児の難治性NEへの有効性も報告されはじめている5~7)。
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