特集 腎・泌尿器疾患―血尿から移植まで
病因研究・遺伝子診断の進歩
ステロイド感受性ネフローゼ症候群
辻 章志
1
TSUJI Shoji
1
1関西医科大学小児科学講座
pp.1187-1191
発行日 2023年7月1日
Published Date 2023/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001019
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はじめに
ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome:NS)は大量のタンパク尿を呈し,低アルブミン血症や浮腫が出現する腎疾患群で,小児においては約90%が基礎疾患を有さない特発性であり,組織学的には特発性の約80%以上が微小変化型NS(minimal change NS:MCNS)である。小児の特発性NS(idiopathic NS:INS)はステロイド投与により約80~90%は完全寛解が得られ,ステロイド感受性NS(steroid-sensitive NS:SSNS)とよばれる。一方,ステロイド投与にもかかわらずタンパク尿が持続する場合はステロイド抵抗性NS(steroid-resistant NS:SRNS)とよばれ,約10~20%存在する。SSNSの生命予後は良好で死亡することは少ないが,再発の多いことが臨床上問題となる。近年,SRNSに関しては約30%にポドサイト関連遺伝子の異常が報告されており,ポドサイトの構造異常がSRNSの発症に関連していると考えられている。そのため少なくともSRNSの一部は単一遺伝子病として認識されている1)。一方,SSNSは,発症の要因として免疫異常,感染症や遺伝的背景などが関与している多因子疾患であると考えられている。
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