特集 新しい時代の小児感染症
各論:感染臓器別
中枢神経感染症
脳炎/脳症
鈴木 道雄
1
SUZUKI Michio
1
1安城更生病院小児科
pp.509-513
発行日 2023年4月1日
Published Date 2023/4/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000829
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
急性脳炎(acute encephalitis)は,精神状態の変化と,急性の発熱,けいれん発作,神経学的障害,髄液細胞増多,神経画像や脳波の異常の組み合わせにより定義される1)。脳炎の原因はさまざまなウイルスを中心とした感染性脳炎と,抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体のような抗体が関与する自己免疫性脳炎に大別される。病理像は脳実質の炎症所見を認めるものである。一方,急性脳症(acute encephalopathy)は,病原体の直接浸潤を認めず,病理像は炎症所見を欠く浮腫である。急性脳症の定義として,『小児急性脳症診療ガイドライン2023』では「Japan Coma Scale 20以上(Glasgow Coma Scale 11未満)の意識障害が急性に発症し,24時間以上持続するもの」としており,「ほとんどは感染症の経過中に発症する」2)。急性脳症は多くの症候群を含む疾患群であり,病態としては代謝異常,全身性の炎症反応(サイトカインストーム),興奮毒性(けいれん重積)の3つの病態が相互に関連し,症候群分類として表のように分類される2)。臨床的には急性脳炎,脳症の判断は難しく,髄液細胞数増加を認めるものを脳炎,認めないものを脳症としている。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.