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▶ 脳炎・脳症の撮像では,指示が入らない患者や鎮静が必要な患者が多いこと,また小児での発症が多いことから,検査時間が限られる可能性があることに留意されたい。拡散強調像やT2強調像,FLAIR像などの重要なシーケンスから先に撮影する必要がある。
▶ 脳炎・脳症においては拡散強調像で特徴的な所見を呈するものが多く,拡散強調像が最も有用なシーケンスといえる。撮像時間が短いことも検査時間の限られやすい状況にマッチしている。FLAIR像やT2強調像は通常は病変の検出に優れているが,髄鞘化が完了していない乳児の脳においては正常白質と病変との信号の差異が出にくく,病変の描出が不明瞭になることがある。拡散強調像のみで所見がとらえられることも珍しくない。特に,高b値拡散強調像では高いコントラストが得られ,軽微な脳浮腫も検出できる。通常の拡散強調像(b=1,000sec/mm2)より高b値(b=3,000sec/mm2)拡散強調像で急性脳症所見の検出率が向上したという報告もある。3T MRIではb値を高くしても画質が保たれるので,脳症が疑われる場合には積極的に3T MRIでの高b値拡散強調像を併用したい。
▶ 造影検査は髄膜炎の評価では必須となるが,脳炎の場合は拡散強調像を含む非造影MRIでも診断可能なことが多く,また小児や全身状態不良例への造影剤投与のリスクも踏まえたうえで必要性を検討すべきである。
▶ MR spectroscopy(MRS)やarterial–spin labeling(ASL)は,急性脳症における診断だけでなく重症度判定や予後の評価に有用であると報告されている。検査できる施設は限られ,かつMRSは撮影時間が長いことや体動に弱いことがネックではあるが,両者とも可能であれば検討されたい検査である。
▶ 脳症は多彩な病態・疾患を含むが,ここでは,脳症のなかでも高頻度であり,『小児急性脳症診療ガイドライン』において「MRIが特徴的な所見を呈し,診断の根拠となる」としてMRI撮影が推奨されている,痙攣重積型(二相性)急性脳症(acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion;AESD),可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion;MERS),急性壊死性脳症(acute necrotizing encephalopathy;ANE)の3疾患を取り上げる。
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